マーケティング活動におけるブランディングや各種プロモーション施策を進めていく上で、自社の商品やサービスをどのように消費者に伝え、どのように魅力的に見せ、購入に至ってもらうか。これを実行していく過程でよく用いられる手法に、「ペルソナ」というものがあります。私たちは、この「ペルソナ」を設計し、それをマーケティングプロセスに組み込むための支援をしています。
後編では、2つのペルソナ構築例を挙げて、それぞれの違いや、次に取り組むべきことなど、前編で紹介したペルソナ構築の手順も踏まえながら説明していきたいと思います。
ペルソナ構築例・その1
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<新商品のチョコレートの購入者ペルソナ>
20代の女性 未婚・都内勤務、一人暮らし
SNSを利用してコミュニケーション、情報発信は多い
お菓子やスイーツをよく食べる。
トレンドに敏感でスイーツ・お菓子をよく食べている。
デジタルツールを使いこなす情報感度の高い若者
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このペルソナを、関係者で共有したときに、どのようなことができるか、考えてみてください。また、自分がこの情報をもとに、どれだけのことを理解できるかも合わせて考えてみてください。どういうことが問題で、どのように変えていくことができるかを大きく2つの観点で説明したいと思います。
情報が少ない・奥行きがない
前編のペルソナ構築の手順のところでも説明したように、ペルソナは、生活者が本当に実現したい目的を理解し、その実現にどう貢献できるかを考えるために、生活の環境、背景、生活者の考え方などを把握するための情報を収集する必要があります。そのためには、購入までではなく、その先の体験や行動につながるところまで視野を広げて情報を整理しなければ具体的なペルソナを思い描くことができません。今よりも豊富で、また生活や行動を把握し、イメージできるだけの奥行きを持った情報収集が必要といえます。
各自がイメージするターゲット像に様々な解釈が生まれてしまう
このペルソナを作った時点が、前編で説明している手順1や2の段階であれば、これから足らない情報を整理し、情報の収集に入っていくことで、情報をさらに補完していくことができます。ですが、この時点が手順5の段階だとすれば、ペルソナ構築は失敗(やり直し)です。ペルソナは具体的な人物像を構築するのと同時に、メンバーや関係者の認識するターゲット像を統合することも求められています。この例では情報が少なく、曖昧なため、ターゲット像に様々な解釈が生まれやすくなっています。これでは各部門への共通理解を促すことができず、各施策を検討する際に各々の解釈が枝分かれしてしまう可能性があり、ペルソナが有効に機能しなくなります。
では、どの程度の具体性が必要になるのでしょうか。次の例を見てみましょう。
ペルソナ構築例・その2
ペルソナの構築は、ストーリーの登場人物設定と、ストーリープロット(筋書き)を作ることに似ています。そのため、どのようなストーリーを構築すべきかを考えるための背景情報として、対象となる人物像の姿はもちろん、一見関連がないように思える行動意識や生活環境、あるいは生活のスタイル(様式)なども情報収集の対象とする場合があります。
たとえば、以下の情報では、どのようなペルソナに感じるでしょうか。
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<新商品のチョコレートの購入者ペルソナ>
名前 :T内 S香
年齢 :25歳
性別 :女性
出身 :静岡県
住所 :東京都渋谷区在住/一人暮らし
職業 :会社員 /イベント会社勤務 イベントプランナー 入社3年目 年収430万
勤務地 :新宿区(西新宿)
家族構成:父・母・祖母・姉・弟・猫
→姉も都心在住・既婚・子あり
●基礎データ(対象者を含むターゲット調査より)
Instagramをよく使う(73%)
5回に1回は食べ物に関する投稿(利用者内22%)
音楽・動画はサブスクリプションサービスを利用(44%)
スイーツの購入は月に2回以上(67%)
お菓子を購入する回数は週に1回以上(58%)
チョコレート以外には、スナック(60%)、アイス(56%)
タピオカドリンクの昨年の購入回数は20回以上が4割弱(37%)
・平日はほとんど家と会社の往復。
・たまに早く帰宅できるとファッションアイテムを物色する。物色するのは新宿駅~新宿三丁目近辺の駅ビルやショップなど。
・休日には彼と一緒に過ごすことが多いが、平日はお互いの時間もあるので、SNSでのやり取りが中心。
・それ以外は動画などで海外ドラマをまとめ見するのが趣味。
・今は仕事が忙しいものの、任されることも増えてきて、新人のメンターとしても頼られている。日本でも有数のビッグイベントを仕切る先輩を目指して、もっと経験を積んでいきたい。
・一方で最近あまり休めていなくて、こんな仕事のスタイルがいつまで続くかちょっと不安。
・SNSはInstagramを中心に投稿もするし、閲覧も毎日する。
・投稿する内容はファッションをはじめ、パッケージ買いした商品の写真などデザインとして気に入ったものの写真など。
・普段はお菓子を控えているが、制限しないと食べ過ぎてしまう。
・お菓子は仕事やプライベートのトレーニングなど、頑張ったあとのご褒美感覚。
・コンビニでも買うが、百貨店や駅ビルでも限定品なども気になるものがあれば、何かにつけてご褒美として買っていたりする。
・誰かとシェアしたり、「おみや」として友人や同僚に配ったりもする
・周囲にはトレンドのセンスを磨く、と言いながらお菓子やショップに通っている。
具体的に理解するのは、理想的な顧客とその生活
確認してほしいのは、この架空の人物が、実際に生活をしている姿を具体的に思い浮かべられるかどうかです。先ほどの情報と比べて、人物像のイメージが具体的になったと感じられるでしょうか。また、ほかのメンバーとこの人物像について話をしながら、メンバー間で認識が共有できるポイントが全体的に増えているかどうかを確認してみましょう。
ペルソナを具体的に描き出すには、定量調査で得られるような物的状態(スペック)といった情報だけでなく、どのような性格か、どのようなマインドを持っているかといった心的状態(インサイト)を踏まえることによって、より深い理解を引き出すことができます。
最も理想的な顧客を理解し、それを具体化することがペルソナ構築の第一歩です。
ペルソナを作りたくなったら、まずはご相談ください。
今回、ペルソナという基本的な用語の説明から、構築することのメリット、作り方の流れと実際の事例について、簡単にご紹介しました。
特に作り方については、社内での情報共有から実際にはどうステップを踏んでいくべきなのか、定量・定性調査はどうやると効率が良いのか、特に自社の業界情報以外の情報をどこまで取り込むべきかなど、組み立てが難しい部分があります。
弊社でペルソナ構築のお手伝いをする際には、プロジェクトチームを交えてワークショップ・ディスカッション等を行うなど、チームメンバーの認識のすり合わせからお手伝いさせていただくこともあります。情報の整理から、必要な調査のご提案だけでなく、目的に応じた情報収集方法のご提案など、前編で紹介しているすべての手順において、課題と現状に合わせた様々な手法をご提案させていただきますので、まずは一度、お気軽にご相談ください。