早速ですが、ブランドを育てていくために大切なことはなんでしょうか?
私たちは、それは「消費者理解」だと考えています。
消費者は、どのようにサービスやプロダクトなどの商品を知り、関心を持ち、購入し、そして共に過ごしていくのか。消費者と商品の関わり方を分析することで、私たちはクライアントの商品を成長させていくための支援を行なっています。
その具体的な方法やゴールはクライアントのご要望によって様々ですが、そもそもなぜ私たちが「消費者理解」と大切にしているのかについて、これからお話ししたいと思います。
【消費者を理解するとは】第1回:ブランドイメージとはなにか
変化するブランドイメージ
消費者にとってブランドとは、どのようなものなのでしょうか。
ブランドを生み出すのは企業ですが、ブランドを育てるのは消費者だと言えます。生み出したブランドを大きく成長させるためには、消費者や社会へ訴えかけるメッセージと消費者や社会のリアクションにいかに対応していくかが重要です。
近年、コミュニケーションの手段が急激に増えたことで、人と人、人と企業やブランドの繋がり方が多様化・複雑化しています。その中で、ブランドは自身の商品を説明するだけでなく、商品が関連すると思われる世の中の様々な出来事について、意見や主張を発信する機会が増えました。
その結果、消費者は「自身がそのブランドの商品を利用するかどうか」だけでなく、「そのブランドの主張に共感できるか」も重要視するようになってきています。今やブランドと消費者の関係性は、購入前から購入時、そして購入後においても、連続的かつ持続的であることが求められるようになっています。
購入してもらうことだけを目的とせず、消費者の生活そのものに向き合うことで、顧客体験や体験価値といったエクスペリエンス(経験)、経験による共感が求められています。
ブランド、または企業が消費者とこのような関係性を築いていくにあたって、消費者が何を考えているのか、どのような人たちであるかを知ることが、ブランドを育てるための第一歩だと考えています。
メッセージとリアクションのギャップを掴む
消費者の考えや性格を知るために、まずブランドは消費者にどのように受け入れられているのかを確かめる必要があります。それが一般にブランドイメージと呼ばれているものです。私たちは、ブランドイメージとはメッセージとリアクションの往復、つまり、コミュニケーションを通じて形成されるものだと捉えています。
メッセージとは「企業やブランドのアイデンティティやそれに関連するあらゆる情報」、リアクションとは「消費者が認知・購入・利用などの行動をとることや、その過程で企業やブランドに抱く印象」のことです。
例えば、伝言ゲームはメッセージがシンプルであればあるほど内容が正しくが伝わりやすいですが、複雑になればなるほど聞き間違いや見間違い、言い間違いといった表面的なズレから意味や解釈の違いを生み出し、人によって様々な受け取り方・解釈がされてしまいます。一方はメッセージを投げかけ、もう一方はリアクションを返す。これはコミュニケーションの上では不可欠です。その往復の過程で、何が伝わり、何が伝わっていないのかを把握することは重要ですし、もっとも伝えたいことは何なのかを厳選することにも繋がります。
そのため、私たちはメッセージとリアクションの往復の間で、どの程度のギャップが生まれているのかを確かめることからブランドイメージの把握を始めます。たとえば、過去にあるブランドの調査を行った際、訴求したいブランドターゲットの年齢層を大きく超えた年齢層が含まれていることがありました。それは、ブランドが生まれた当初のファン層が離れずに年を重ねていたことが要因でした。
ブランドの成長とユーザーの成長がともに成長することは悪いことではありませんが、ブランドが掲げる要素と離れていないかどうかは、一定期間ごとに把握する必要があります。ブランドと消費者とのギャップを知ることは、この先のブランドをどのように進めていくかを考えるためには極めて重要な取り組みと言えます。
ブランドと消費者の現在地を知る
今、自分たちのブランドが消費者にどのように伝わっているのか。この確認と修正のプロセスを踏まずにいると、消費者が抱く印象そのものが変わってしまい、ブランドに対するイメージの変容が起こっていることや、その兆しを察知することが難しくなっていきます。
イメージの変容の要因としては様々な可能性が考えられますが、主に以下のようなものが挙げられます。
・同一カテゴリにおける競合ブランドのイメージ
・カテゴリを超えるブランドの介入
・消費者のライフスタイルの変化によるブランド、あるいはカテゴリそのものへの関心の変化
・社会全体の環境変化
さらに、ソーシャルメディアなどの普及によって、情報の経路や発信者が多様化している今日では、いつ・どこで・どのように情報が拡散されていくのか、そしてそれはポジティブなものかネガティブなものかといった様々な要素について予測し、制御していくことが難しくなってきています。
ブランドの現在地を知るためには、ブランドがどのような世界でどのような市場に対し、どのような消費者へアプローチを進めるべきか知る必要があります。消費者は、今までよりも多くの情報に触れ、多くの選択肢を持ち、多様な価値観を持っていて、様々なライフスタイルを送っています。彼らのことを知り、ブランドと消費者の現在地を確かめるためには、自社の商品カテゴリについての意向を知るのも重要です。同時に、それだけではなく、消費者を起点としたライフスタイルにおける自社の商品カテゴリの位置付けを知る、ということも同じく重要です。
ブランドイメージを高めるために
ブランドイメージを把握するには、自社で持つ独自の指標があれば、その変化をKPI
としてチェックすることができます。最も一般的なものは、定期的な認知度調査などが挙げられます。広告訴求などの効果測定や、ブランドの会員へ向けたブランド理解を確認するための定量・定性調査のほか、また、競合や同規模の企業間のブランド評価を相対的・多面的に行うといった方法もあります。
ブランドによっては、自社商品のユーザーに絞って調査を行ったり、あるいは一般消費者を想定して調査をしたりするということもあると思います。評価したい要素や目的によって、集めるべき情報は変わってきます。定量調査だけでなく、定性的な調査、デスクリサーチといった複合的な情報収集を行うことができれば、様々な観点からより立体的な消費者像をつかむヒントを得ることもできます。
こうした情報は、ブランドの現在地を把握し、ブランドの施策や新たな方向性を考えていくための基礎材料となります。自社ブランドのファンが、自社のブランドの何を評価しているのかを確かめるためにも、消費者に耳を傾けていくことが大切です。
今回お話した内容を踏まえて、次回は「消費者にとって、一生モノのサービスとは?」というテーマでお話します。
第2回につづく!