株式会社コプロシステム

2025.02.26 | 役員ブログ AIとマーケティングが目指すもの

皆様、こんにちは。当社でマーケティングを担当している塚野です。
このブログでは当社のマーケティングについての考え方や取り組みについて、徒然なるままにお伝えしていこうと思いますので、宜しくお願いいたします。

AIがマーケティングに与える影響

さて、今回は近年進化の激しいAIがマーケティングに与える影響について考えてみたいと思います。と言ってもここ1,2年といった直近のことではなく、もう少し先の未来に目を向けて、大胆に、そしてちょっとだけ無責任に考えを進めてみます。

ご存じのように、2022年の年末にChatGPTが発表されて以来、生成AIは世の中の話題の中心的トピックになりました。それはマーケティングにおいても例外ではなく、さまざまな実務で活用が始まっています。例えばSEO対策を意識したブログ記事やSNS投稿、画像や動画などのコンテンツ制作を始めとして、リサーチやデータ分析、広告やSNS運用などありとあらゆるマーケティング業務でAIが活用され、その価値を高めています。では、AIが進化し、活用が進むとどのようなことが起こるのでしょうか? 今回のブログでは、以下3つのポイントで考えてみたいと思います。

最適化の檻とマーケティングの「見えない化」
織り込まれるセレンディピティ
社会をつなぐ“We”の拡大

最適化の檻とマーケティングの「見えない化」

まず、AIが進化するに従ってあらゆるプロセスは最適化され、人間の判断が必要になるシーンは次第に少なくなっていくでしょう。もうすでに現実に起きつつありますが、マーケティングを行う企業サイドでは、マーケティングの運用業務の大半が自動化され、そこに必要なコンテンツもさまざまなリアルタイムデータによって自動生成されます。更に個別の運用作業だけではなく、「何を(Product)、いくらで(Price)、どこで(Place)、どのように(Promotion)」提供するのかという4Pのマーケティングミックスなどのプランニングにおいても、リアルタイムの情報を取り込みながらプランがアップデートされ、最適化され続けます。最適化、最適化、最適化です。

最適化の檻に囲まれたマーケティングでは、結果としてマーケティングの実務として残るのは「商品(Product)としてどのような存在意義があるのか、付加価値があるのか」といった意志や魂を込めることだけになるかもしれません。しかしそれすら、いずれは膨大なデータによる「最適な存在意義や付加価値」がはじき出され、自動的に市場投入されるようになるかもしれません。

これまで、デジタル技術やメソッドは、マーケティング戦略・施策の選択肢を広げる方向に働いてきました。しかし生成AIは進化し続ける無数のアルゴリズムから選択肢を絞り、究極的には選択肢を見えなくする=選択する必要がない方向に働きます。

他方の消費者の変化を見ても、やはりマーケティングの「見えない化」は進みそうです。個人に紐づくあらゆるデータに基づき徹底的なパーソナライズが進み、さまざまな体験やコンテンツが「まさに自分だけのために」提供されることになります。つまり目の前には選択する必要のない「ベストチョイスの一択」が現れます。現代のマーケティングには「市場に複数の選択肢がある状態で特定の商品を選んでもらう活動」という側面がありますが、「選択肢がない」状況では、マーケティングが成立し得ません。そうなると、マーケティングは商品を選んでもらう手段ではなく、無意識を含めて「心のベスト10 第一位」になるための手段に変質していくのでしょうね。

織り込まれるセレンディピティ

ここで少し話題を変えましょう。私は気分転換に書店に行くのが好きなのですが、その理由は「書店には幸せな偶然の出会い(セレンディピティ)があるから」の一言に尽きます。書店内をフラフラと歩きまわっていると、普段あまり読まないような内容の本に対して「ん⁉」と思って手に取り、そのまま購入することがあります。そのような偶然の出会いで購入し、読んでみて「面白かった!」と思えると、やっぱり書店はいいなぁと思います。一方で、残念ながら現在のところAmazonや楽天にそのようなセレンディピティを感じることは出来ません。

ところがそのようなセレンディピティですら、今後のAIの進化の中でマーケティングに織り込まれるようになる可能性が高いと思います。例えば2025年2月時点でスマートフォンのChatGPTアプリでは音声入力やカメラを使ったインプットが可能になっています。これはAIに耳(聴覚)と目(視覚)が付いたことと同義です。さらにスマートグラスなどを始めとしたデバイスの進化でいずれは嗅覚や味覚、触覚もAIが知覚するようになるでしょう。そうすると、人間が意識・無意識を問わず感じているさまざまな知覚をAIが感じることになるわけです。

セレンディピティ=幸福な偶然の出会いと言っても、全くの偶然だけで生み出されるわけではなく、日常生活の中でのさまざまな知覚を通じたインプットの蓄積が、ある環境的なトリガーを経て結果として幸せな偶然として発露するわけなので、AIが人間と同じような知覚が出来るようになると、「一見偶然に見えるが実は徹底的に計算しつくされた提案」がされるようになります。

社会をつなぐ“We”の拡大

AIが「人間が心地よいと思う」方向に一直線に進化すると、マーケティングは本人に意識されていない嗜好や価値観を含めて「自分にピッタリ」なモノやコトで人を囲んでいきます。そして、その好みや価値観はAIにより更に強化されていきます。これはエコーチェンバー現象とも言われるもので現在のSNSに顕著なものですが、要するに価値観の蛸壺化で、多様な価値観があるはずの世界が「こちら側」と「あちら側」とに線引きされやすくなります。結果として、収束点の見出せない議論も起こりやすくなるでしょう。そしてその行き着く先は、各人は狭い部屋の中で心地よく過ごす一方で、社会全体としては分断が至る所に存在する世界かもしれません。

ではマーケティング的な視点で、そうではない世界を目指すにはどうしたらよいのか。一つの方向性として、重要なのは「本質的な人間らしさ」の追求ではないかと思います。

人間は基本的に自分のことを一番大事にしますよね。一方で、人間は高度に社会性をもった動物なので「私=”I”」ではなく「私たち=”We”」として行動することができます。そして今後、その”We”をどれだけ意識的に広げられるかがとても重要になってくると感じています。

かの有名な「マズローの欲求5段階説」では一番上位にあるのは「自己実現欲求」ですが、この欲求には実は利他的な意味合いが多分に含まれています。つまり、社会全体を”We”と捉え、善きことを為したいという欲求だという説明です。この”社会とつながる”「自己実現欲求」を満たすマーケティングこそ、これから大切になるアクションだと思います。例えば「私たち○○会社△△部の人間は~」という主語と、「私たち地球の住人は~」という主語では、その言動や価値観は全く違うものになります。「地球の住人」は極端ですが、人が主語を大きくして行動するほど社会全体の幸福度は上がっていきます。そしてマーケティング活動として“We”を大きくするには、本質的な人間理解が必要になってきます。

デジタル全盛の現代において、人間理解を前提とせずデータ上だけでPDCAを回すようなアクションは、すでにある「こちら側」にしか響かないものになってしまいます。しかし今後はそうではなく、社会としてどうありたいのかを考え、”We”をどう広げられるかを考えることが今後のマーケティング、ひいては企業活動に求められる行動になるのではないでしょうか。

人間が本当に人間らしくあるために

ここまでお話ししたことは、あくまでも私の現在の考えなので、今後AIが本格的に社会システムの中心に組み込まれていく中で、正しく社会全体が最適化されていくと状況は全く違うかもしれません。しかし、本当の意味で「人間が人間らしくいられる」というのは見失ってはいけない道標だと思います。

当社が掲げる『エンゲージメントマーケティング』は社会も含めたさまざまな「つながり」を創り出し、最適化することをコンセプトとしたマーケティング支援サービスです。

各クライアント企業の事業方針をマーケティング戦略の起点として「誰に、何を」を徹底的に掘り下げるところから始め、マーケティングで成果を上げるために戦略・戦術レベルで伴走しながら実行支援いたします。

各企業により状況はさまざまですので、原則としてのマーケティング哲学は持ちつつ柔軟に対応いたします。マーケティングや顧客理解に課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

今後もこのブログではマーケティングについてのよもやま話をしていきたいと思いますので、宜しくお付き合いください。

常務取締役   塚野 征彦